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債権者取消権



ここでは債権者取消権を取り上げます。別名、詐害行為取消権と言ったりもします。 同じ意味です。この債権者取消権は、ちょっと難しいです。難しいというよりは、 ややこしいです。きちんと理解して覚えましょう。この債権者取消権には、いろい ろと論点があります。試験対策としては、それらを見ていく必要がありますが、こ こではそもそも債権者取消権とはどういうものかということについて、簡単に見て いきたいと思います。

この債権者取消権は、債権者代位権と同様に、債務者の責任財産を保全するための 制度です。つまり、簡単に言えば、債務者に財産がなくて、債権者に対して債務の 弁済ができない場合に、債務者の財産を保全するために債権者がとりうる手段とし て認められた制度、ということです。

では、この債権者取消権とは、どういうものなのでしょうか。まずは次の事例を考 えてみましょう。


■事例■
A銀行がBに対してお金を貸しました。Bはそのお金を使ってしまい、Aへの弁済 期になっても返済できません。Bは他に唯一の財産として、土地甲を有していまし た。ところが、Bは土地甲を、Cに贈与してしまいました。
■  ■


このような事例を取り上げます。この場合、Aを債権者、Bを債務者、Cを受益者 と言います。この言い方は覚えてくださいね。


ところで事例のような場合、A銀行はBに対して貸金債権を有しています。弁済期 が来れば履行請求するのが、当然と言えば当然ですよね。

しかし、事例のような場合、Bはお金がありません。請求されても、お金を返せま せん。このBの唯一の財産は甲土地です。このような場合、甲土地を代物弁済とし てAに弁済することもありえます。いずれにしても、近いうちに、土地甲はBのも のではなくなりそうです。

そこでBとしては、Aに対する嫌がらせの意味も込めて、その土地をCに贈与して しまいました。

この場合、誰が一番困るでしょうか。

いつまでもなくAですよね。この場合、Aとしてはお金が戻ってこない以上は、B から土地を取り上げたい、もしくは土地を売却してお金に代えて、そのお金から支 払ってもらいたい。こう考えるはずです。しかも、Aは何も悪くありません。弁済 期が来たから、貸したお金を返してもらいたい、それだけです。

他方で、誰が一番悪いでしょうか(悪いというのは、保護されなくても仕方がない ということです)。

いうまでもなくBです。Bは債務者ですから、借りたお金を返さなければならない 立場にあります。それを返さず、しかも唯一の財産である土地を、Cに贈与してし まっているのです。

問題はCです。Cは土地の贈与を受けています。ただで土地を手に入れること自体 は、何ら問題ありません。

ここでちょっと考えてみましょう。もしCがAB間の事情を知っており、「自分(C) が土地の贈与を受ければ(=ただで土地を手に入れれば)、困る人(A)がいる」 ということを、あらかじめCが知っており、それにもかかわらず土地の贈与を受け たというような場合はどうでしょうか。

このような場合、Cは保護されなくても仕方がない、と言えるのではないでしょう か。

そこで、このような場合に、法はAに債権者取消権の行使を認め、BC間の贈与を 取り消し、土地をBの元に戻すことを認めているのです。

これが債権者取消権です。



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