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債権の二重譲渡




■1、総論
債権の二重譲渡という問題があります。次の事例を見てみましょう。


■事例■
債権者Aが、債務者甲に対して金銭債権を有しています。このときに、7月1 日にBへ債権を譲渡しました。さらに同じ債権を、8月1日にCへ債権を譲渡 してしまいました。
■  ■


最初に譲り受けたBを第一譲受人、次に譲り受けたCが第二譲受人です。この ときのAB間、AC間のそれぞれの契約自体は有効です。土地を二重譲渡した 場合にも、二重譲渡自体は有効なことと同じように考えて下さい。

そして、BにとってのC、CにとってのBを「第三者」と言います。まさに土 地の二重譲渡と同じような関係です。

この債権の二重譲渡の場合、「第三者」に対して債権を譲り受けたことを主張 するには、「通知又は承諾」が、確定日付によることが必要です。先に債権譲 渡を受けたBが無条件に主張できるわけではありません。

なお、ここで言う「確定日付」とは、「公的機関が通知・承諾の日付を証明し てくれる証書」というぐらいの意味に理解しておいて下さい。

Bが「確定日付によらない通知又は承諾」、Cが「確定日付による通知又は承 諾」の場合には、Cが債権の譲受を主張できます。

「確定日付による」通知又は承諾は、不動産でいう「登記を備えた」にあたる ものと理解して下さい。


■2、いずれも確定日付による場合
ところで、不動産の二重譲渡の場合には、第三者に対して自己の所有権を主張 するには、登記を備える必要がありましたね。

しかし、ここからが不動産と違います。不動産の場合は、所有権移転であれば、 一人の人しか所有権登記を備えることはできません。

でも、債権譲渡の場合には、二人以上の人が「確定日付ある通知又は承諾」に よる場合が可能です。先ほどの例に即して言うと、BもCも確定日付のある通 知又は承諾を備えることが可能なのです。


ではBもCも確定日付のある通知又は承諾を備えた場合、誰が債権者として、 優先して弁済を受けられるのでしょうか。

ここで考えてみましょう。そもそもなぜ「通知又は承諾」を必要としたのでしょ うか。

それは、債務者に債権譲渡の事実を認識させ、誰が債権者であるかを知らしめ るためです。

とすれば、債務者が早く認識した者が勝つということなるのです(これを到達 時説と言います)。通知であれば、早く届いた(つまり「到達した」)ものが 勝つということです。


ここで気をつけないといけないことは、AB間とAC間の債権譲渡の契約の先 後ではないということです。AB間は7月1日に契約をしています。他方、A C間は8月1日です。

しかし、第一譲受人Bの確定日付ある通知よりも第二譲受人Cの確定日付ある 通知のほうが先に届いた場合、Cが勝つということになります。


■3、同時到達の場合
また、複数の者が皆確定日付による通知をなし、その通知が同時に債務者に到 達することも考えられます。

この場合は、誰もが自己が債権者であると主張できます。つまり、早く債務者 に請求した者の勝ちです。この場合は、誰もが確定日付がある通知・承諾を備 えている以上、自分が債権者であると主張できるので、早い者勝ちとしたわけ です。


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