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解答・相殺2




問1
認められない(×)

このような場合については、あまり目にする機会がないかもしれません。本問の場合、 ABともに「夜12時以降は静かにするという債務」を負担しています。本問のような 債務は、「債務の性質が相殺を許さないとき」にあたります。この債務の場合には、 お互いに同等の債務を負担していても相殺できません。
常識的に考えても、本問のような場合に相殺を認めては、社会生活が成り立たないと思いますよね。
よって、認められません。


なお、相殺できる債権債務については、法律上は制限はありません。 でも、実際に相殺されるのは、ほとんどが金銭債権債務です。宅建試験対策という事で言えば、 金銭債権以外の債権が相殺されようとしている場合には、「債務の性質が相殺を許さないとき」 に該当するのではないか、と考えてみるとよいと思います。
この場合に該当する例として、ほかに「お互いに写真を撮ってあげる」などがあります。


問2
認められない(×)

AB間には、売買契約が成立しているので、Aは代金債権を有し、Bは引渡債権を有しています。 そして、両者は同時履行の関係にあります。

ここで、相殺というのは、相殺権者からしてみると、自働債権については一方的に相手方の履行を 強制し支払ってもらったのと同様の効果が生じます。

もし、本問でAの相殺の主張を認めると、Bは一方的に履行を強制されるわけですから、 Aの一方的な意思表示によって、同時履行の抗弁を失うことになります。
これではBがかわいそうです。Bの同時履行の抗弁は、売買契約の等価的関係 (←天秤にのせたときにつり合っているということです)から認められるものです。 これは相手方の履行を確保するために、ある種の担保として認められているものです。 いくら貸金債務を別個に負担しているからと言って、Aの一方的な相殺によって 奪われるものではありません。
自働債権に抗弁権が付いているときは、相手方に履行を強制できないので、相殺できないのです。
よって、Aの主張は認められません。


問3
認められない(×)

「差押」というのは、「支払いの差止め」です。本問に即して言うと、差押がなされると BはAに対して支払えない、ということです。
他方、問3でもお話ししましたが、相殺というのは、相殺権者からしてみると、自働債権 については一方的に相手方の履行を強制し支払ってもらったのと同様の効果が生じます。
つまり、差押を受けているにもかかわらず、相殺を認めると、支払ってもらったことになって しまいます。これでは、差押債権者(本問の甲のことです)の利益を著しく害します。
よって、Aの相殺の主張は認められません。


問4
認められる(○)

本問においては、受働債権が差押られています。
相殺については、相殺権者から受働債権を見ると、一方的に支払いをなすということになります。
本来、差押は、支払いの差止めですから、Aは相殺できないとも考えられます。
しかし、Aが差押前に自働債権を取得していた場合には、Aとしては、
「もし、Bが(Aの)債権を支払ってくれなければ、自分の債務で相殺すればいいや」
と考えているはずです。これを相殺の担保的機能と言います。
この相殺の担保的機能を重視して、差押前に自働債権を取得した場合には、相殺が出来るのです。
本問では、差押前にAが自働債権を取得しているので、Aの相殺の主張は認められます。



問3と問4について(ポイント)
問3は自働債権が差押えられた場合で、問4は受働債権が差押えられた場合です。
自働債権が差押えられた場合は、相手方がいつ受働債権を取得したかにかかわらず、相殺できません。
他方、受働債権が差押えられた場合には、差押前に自働債権を取得した場合には、 相殺できます。逆に言えば、差押後に自働債権を取得した場合には相殺出来ないだけです。

ここの差押と相殺については、もっと細かく見ていくと、いろいろ理由もあって、 学問的には面白いところなのですが、行政書士試験や公務員試験の合格ということを考えると、 あまり深みに入らずに、まずは本各問と上記ポイントをきちんと押さえておくのが得策だと思います。



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