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解答・相殺




問1
認められない

不法行為に基づく損害賠償請求権を受働債権として相殺は出来ません。他方、 不法行為に基づく損害賠償請求権を自働債権とする相殺は出来ます。
では、本問のように、自働債権、受働債権ともに不法行為に基づく損害賠償 請求権のときはどうなるでしょうか。
この場合には、Bの利益を重視して相殺出来ません。「支払ってもらえる」と いうBの利益を、Aの一方的な行為によって奪うことは出来ないのです。



問2
認められる

Aの主張が認められるためには、AB間の相殺契約が有効であることが必要です。
確かに、問1の解説でもお話ししたように、不法行為に基づく損賠償債権を受働 債権として、相殺は出来ません(509条)。
しかし、そもそも509条の法の規定は、一方的な行為による場合にのみ適用が あります。一方的な行為による相殺の場合には、相手方の関与しえないところで 支払ってもらえるという利益が消滅してしまうので、被害者保護のために禁止した わけです。
本問のように、相殺契約の場合には、相対立する双方の了解のもとに、債権債務 が消滅するので、お互いの保護に欠けるところはありません。
したがって、AB間の相殺契約は有効です。
よって、Aの主張は認められます。



問1および問2について(まとめ)
そもそも509条は、なぜ不法行為に基づく損害賠償請求権を受働債権とする相殺 を禁止しているのでしょうか。
それは、不法行為の被害者に対して実際にお金を支払い、そのお金で被害者が受けた 被害から立ち直ってほしい、ということにあります。
問1の場合、どちらの債権も不法行為による損害賠償債権ですが、Aの自働債権に ついてはAが自ら相殺をなす以上、自分で「支払ってもらえる」という利益を放棄 しています。
しかし、Aが相殺すると、Bの債権(本問では受働債権)については、Bの関知し 得ないところで、Bは「支払ってもらえる」という利益を失うことになります。 それではBがかわいそうです。
よって、問1のAの主張は認められないのです。
他方、問2においては、契約である以上、Bもその利益を失うことを承知しています。
よって、相殺契約は有効と言え、Aの主張は認められるのです。



問3
認められる

債務の履行地が異なることは、相殺できるか否かとは関係ありません。履行地が 異なっていても、相殺は出来ます。
よって、Aの相殺の主張は認められます。



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