表見代理 |
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まず、次のような事例を考えてみましょう。 ■事例■ Aが土地を所有していました。Bは、Aに内緒で勝手にその土地を「Aの代理人B」として、 Cに売ってしまいました。 ■ ■ この場合、BはAから売買の代理権を与えられていませんから、無権代理となります。無権 代理ですから、このままではCは、土地の所有権を取得することはありません。 この場合、例え、Cが「BはAの代理人であり、売買の代理権を有している」と信じていた としても、ダメです。Cは土地の所有権を取得しません。 では、BがAの土地に抵当権を設定する代理権を与えられていた場合は、どうでしょうか? この場合でも、やはりBは無権代理となり、基本的にはCは土地の所有権を取得しません。 なぜなら、Bは抵当権を設定する代理権は有してしても、売買をする代理権は有していないか らです。Bの代理権は与えられた範囲内のことしかできません。それを超えて何かをするとい うことはできないのです。 もし、この場合、Cが土地の所有権を取得することになると、とても不都合なのがわかりま すか? この場合、Cが土地の所有権を取得するということは、Aが土地の所有権を失う、というこ とです。上記の例では、Aは何も悪くありません。悪いのはBです。 Aは何も悪くないにもかかわらず、土地の所有権を失うことはありません。 ということは、Aが土地の所有権を失っても仕方がないような理由(これを帰責性といいま す)がある場合には、Aを保護しなくてもよいということが言えますね。 これが表見代理です。 このように表見代理とは、代理人が権限を有していないにもかかわらず、代理人が相手方と なした契約が、相手方と本人との間で成立してしまうことをいいます。 ただ実際に表見代理が成立するためには、Aに帰責性があることに加え、Bが代理権を有し ているかのような概観の存在、Bが代理権を有していないことについてCが善意無過失であること、 の三つの要件が必要です。 ちなみに民法では、109条、110条、112条に、代表的な表見代理の場合を規定して います。 無断転載・転送を禁じます。 Copyright(C)2006 後藤行政書士事務所 All Rights Reserved. |