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背信的悪意者



背信的悪意者は、対抗要件のところを勉強する際には、必ず出てくる重要な論点で す。試験によっては、毎年のように出題されています。どのような者が背信的悪意 者なのか、まずは基本をきちんと把握しましょう。


ある者とある者が対抗関係にあったとしても、「第三者」にあたらない者には、登 記がなくても、所有権を主張できます。

こう言っても、何が何だかわからないと思います。具体例を見てみましょう。


■事例■
Aが所有する土地を、Bが売買により取得しました。しかし、Bはいまだ登記を取 得していませんでした。そこでCは、Bが移転登記を受けていないことに乗じ、B に高値で売りつけ、不当な利益を得る目的でAをそそのかし、Aから当該土地を買 い受け、移転登記を受けました。
■  ■


本来は二重譲渡ですから、Bは登記を具備しなければ、Cに対して所有権を主張で きません。

しかし、事例の場合、Bは登記を具備していなくても所有権をCに対して主張でき ます。

このようなCを背信的悪意者と言います。背信的悪意者に対しては、登記なくして 所有権を主張できるのです。事例の場合のCは、なんとなく「悪いヤツ」のような 気がしませんか?Cは「正当な利益を持っている」とは言い難いですよね。このよ うなCに所有権を認める必要はありません。逆にBを保護すべきです(Bに所有権 の主張を認めるべき、ということです)。

よって、Bは登記なくして所有権をCに主張できるのです。


このような者は保護に値しません。かかる者に権利を認めていたのでは、あまりに Bがかわいそうです。社会における取引というものが正常に機能しません。

しかし、ここで気をつけないといけません。次のような場合です。

BがAから土地を取得しましたが、Bは登記を備えていません。このとき、AB間 の事情を知っているCが、Aから土地を取得し、Bより先に登記を備えてしまいま した。

この場合のCは「第三者」にあたります。つまり、Bは登記を備えていない以上、 Cに対して所有権を主張できません。


このように、単に知っているだけにすぎない者のことを、背信的悪意者と区別する ために、単純悪意者と言う事もあります。単純悪意者は、登記を備えれば保護され ます。つまり、権利を主張できるわけです。背信的悪意者と違うところです。

では、なぜ単純悪意者は保護されるのでしょうか?つまり、なぜ「第三者」に当た るでしょうか。

日本は資本主義社会です。通常の取引の範囲内と言える部分は保護されます。許さ れる範囲の「出し抜き」は保護されるのです。そして、単純悪意の場合には、先に 登記を備えるということは、競争社会の中では許され、保護すべき形態なのです。 自由競争の範囲内ということになるわけです。

悪意で、かつ登記を備えていないことに乗じて相手に高く売りつける、というよう な場合が保護されないのです。競争の範囲を逸脱しているということです。このよ うな者が「背信的悪意者」にあたるのです。

また、そもそも登記というのは法務局に書類を提出した順になされるので、もとも と「早い者勝ち」の性質を有するものなのです。


背信的悪意者以外にも、全くの不法占拠者や無権原者も「第三者」にあたりませ ん。具体的には次のような場合です。

A所有の土地を、Bが売買により取得しました(未登記)。しかし、Cが当該土地 の上に何らの権利もなく、居座っていました。このときBは登記を備えていなくて も、Cに対して土地の所有権を主張できます。Cが「第三者」にあたらないからで す。Cが「正当な利益」を有していないのは明らかですね。



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